ロシアによるウクライナ侵攻が始まり1か月。今後の世界情勢に他人事ではない危機感を感じているKANKIKUこと環境のきく子です。小麦粉の値上がりや石油の高騰、もちろん私たちの日常生活にも影響があることを肌で感じ、これはこれで厳しい状況ではあるのですが、多くの方が戦火の犠牲になっているこの現実。世界中が仲良く平和に幸せに生きられることが当たり前のことではないんだ、ということに気づかされ毎日やりきれない思いも抱いています。
日本の食を守ることは”国防”である
さて、そんななか、以前、ブログにも紹介させていただきましたが国際ジャーナリストの堤未果氏の著書を読んで、食育が国防意識を育てる、という考え方。『日本が売られる』堤未果 – KANKIKU for the Future (kankikublog.com) わたしの”日本の食料自給率向上を目指したい”とビジョンは、立派な国防である、ということに気づきました。
また、”SDGs環境目標に特化した”事業というコンセプトにしたのも、食料自給率向上は、目標11にある「すみつづけられるまちづくりを」につながるから。米粉推進や日本茶推進事業を少しずつ形にしようとしているのは、田んぼや茶畑の風景を未来へ残し、これらの農産業を守ることが国を守ることにもつながることだからです。
そんななか、たまたま図書館で出会った良書を今日は紹介したいと思います。
『<メイド・イン・ジャパン>の食文化史』畑中三応子(2020年.春秋社)
日本における食料自給率が低くなった歴史的背景、米粉が食料自給率向上のカギとなるか、ということにも触れられているのですが、食料問題を歴史と食文化の観点から振り返ることって、とても重要である、ということに目を見開かされました。
日本は、フード・マイレージ世界第1位&食料輸入量世界第1位!?
日本のフード・マイレージは2位以下に大差をつけた世界第一位。韓国とアメリカの約3倍、イギリスとドイツの約5倍、フランスの約9倍である。 食料輸入量が世界一で、重量のある穀物と油糧種子が7割以上を占め、しかも遠いアメリカやカナダ、オーストラリアから運んでいるのだから当然といえば当然だが・・・(P205)
フード・マイレージとは、食料を運んだ距離のこと。わたしは、温暖化を抑えるためにも、輸送距離は短いほうが良いし、地域経済を活性化させるためにも地産地消・国産国消が大事だと考えていますが、この本によると、フード・マイレージについて2007年に書かれた文献から、日本のフード・マイレージが世界一であることに愕然としてしまいました。輸送距離の長さが世界一なら、食料輸入量も世界一だなんて・・・
日本の食の豊かさが、飽和状態であることと、食料自給率があまりにも低いことこれらの矛盾は歴史と食文化から考察すると納得。
戦後、西洋文化を積極的に取り入れた日本。欧米文化がかっこいいという憧れ、そんなコンプレックスからさらに今や世界中のあらゆる美味しい食が手に入る日本。コーヒーの消費量は世界4位だの輸入量は3位だの言われているのです。
わたしとて、日本ほど世界の食文化を取り入れ、豊かでおいしい生活ができる国はないと思っていますが、なんだか複雑な思いで揺れ動いています。この飽和状態な贅沢な生活はいつまでできるのだろうか・・・もし食糧危機があっという間に日本にもやってきて、輸入がストップしてしまったら、こんな”ありとキリギリス”のキリギリス生活をしている日本はとてもみじめになるのだろうな、それは夢ではなく現実にも起こりうるという危機感を抱かざるを得ません。
美味しい食生活を追求する好奇心は世界一なのに、食の社会的問題について無頓着な日本人であってはならないと思います。
著者の畑中氏のエピローグのタイトル”情けなくとも愛おしいメイド・イン・ジャパン”というフレーズはとてもいい得て妙。日本の食文化史、和食賛美の映り方、情けないけれども、愛おしく守りたいのがメイド・イン・ジャパンなのです。
この本が、みなさまにとって日本の食のあり方を考えたり自分の食生活を見直したりするきっかけになったら、とても嬉しく思います。
著者は最後にこう締めくくっています。
たまたま図書館で見つけた良書。2020年に刊行された鮮度のよい一冊ですので、この春、学びを深める読書に浸ってみるのはいかがでしょうか。