長野県小諸市には、生態系被害・農作物被害の軽減のため捕獲駆除された鹿をジビエとして商品化した「KOMORO PREMIUM」というペットフードがある。

komoro premium by 長野県小諸市

小諸 Shika-Kuruwa Project | 長野県小諸市 | 小諸市の取り組む「Shika-Kuruwa Project」とは、捕獲・駆除されたシカを鹿肉ペットフードや皮革製品へと加工・販売し、得られる売上金を農作物被害対策や生態系保全活動の資金源とする活動です。 (komoro-premium.jp)

環境オタクのわたしは、今年の初めにテレビか何かで、そんな取り組みを知り、我が家の愛犬にSDGsの観点で作られた、しかも”国産”の良質なものを食べさせてみたい、という好奇心で、ネットで調べてこのペットフードを注文してみた。

というところから、いろんな進展が巻き起こるという話を今日はしていきたいと思います!

まず、この小諸プレミアムについて説明させてくださいね。

わたしは、3種類あるうちの、ドライフードを注文したのですが、実際に届いて見てみると、原材料が素晴らしい!

<KOMORO PREMIUM ドライフード>

原材料:鹿肉・鹿レバー(小諸市産)、カツオ・マグロ(静岡県産)、大根葉・キャベツ・ブロッコリー・エゴマ・菜種油(小諸市産)、昆布・米粉

オール国産の原材料。地産地消の取り組みもあり、何が入っているか明確にわかる、良いものしか入っていない。

野生のシカということは、腐りかけた飼料を食べさせられたかもしれない安いチキンやビーフのペットフード違って、自然の新鮮な草や野菜しか食べていないのだから肉質も良いに決まっているじゃないですか!すごい良質なペットフードだと確信しました。                                  

※このフードは総合栄養食ではないので、トッピングやおやつとして与えてください、とのこと。

しかしながら、わたしはすぐさま、一点困ったことにも気づきました。100Gサイズのドライフードを買うと、チャック式の外装の中に、プラ包装された中身が入っていて過剰包装になっている・・・というところ。これでは、私のようなプラゴミ削減したい環境オタクはリピート買いができない、という葛藤が出てきたのです。

そのころから、過剰包装社会の改善を事業ビジョンに掲げて動き始めた私としては、このパッケージがより環境に配慮された形態のものになったら、プラゴミを減らせるし、環境意識の高い購買層にさらに訴えかけられる・・・そんなことを考え始めていました。

製造元、販売元をリサーチしていくと、自治体である小諸市農林課がこの商品を開発した、そして販売元になっている、というのにも驚きました。企業ではなく自治体が商品を作るというのはわたしにとって、とても新鮮な話でした。

自分の事業ビジョンやコンセプトが整ったら、ぜひこの小諸プレミアムについて、小諸市の農林課さんに、このフードのことを色々教えてもらいたいな、さらにエコパッケージ提案や東京エリアでの販路開拓など何かお役に立てないかな、だって、多くの人に広めたい商品だから!とひそかに思い描いていたのです。

そんな頃、ちょうど7月中旬から2か月、毎週木曜日に私は立教大学大学院と日経ビジネススクールが毎年開講している社会人向け講座”ソーシャルデザイン集中講座”のオンラインコースを受講していました。これが本当に学びの深い講座で、一気に世界が広がりましたね・・・全国各地から受講する方と知り合い交流を深める出会いも得られました。

その中に長野県を拠点に、地域活性を手掛けるコンサルティング事業をされている高橋さんという方と知り合いました。高橋さんは、長野で長く銀行業界また、シンクタンクにも在籍されていた、”長野を知り尽くすキーパーソン”だったのです。気さくな高橋さんのお話は楽しくて、8月のある晩、講座後の懇親会でも話足りず、メッセンジャーのビデオチャットをしましょう、ということで、ふと小諸市の鹿肉ペットフードが素晴らしくて、パッケージの改良を提案してみたいんですよね~、なんていう話をしたところ。偶然にも、この高橋さん、小諸市のまちづくり関連のプロジェクトにかかわっているということで、びっくり。農林課にわたしの熱い想いを小諸市農林課さんにつないでくださって、緊急事態宣言がやっと開けた、つい先日のこと。小諸市にビジネス訪問させていただく機会を得られました。

私が長野のキーパーソンと呼んでいる高橋氏と打合せ@小諸駅のまど

農林課の課長さんからは、小諸プレミアムの開発の背景のお話をたっぷりお伺いすることができました。やむをえず駆除した鹿をただ単に処理するという流れだと、1頭あたりそれなりの経費がかかる、その課題解決が必要だということから、ジビエとして鹿肉原料で販売したり、小諸市ブランドとしてペットフードにすることにより、継続して生態系保全と市の財政負担を減らしていく、というお話。また関わってくださる猟師さんの数が少ないということなどもなかなか厳しい現状がある中で、ペットフードの需要と供給のバランスについても教えてくださいました。

最近の朝日新聞記事には、次のように書かれていました。

日本の本州以南だけで1989年度には約31万頭と推計されたシカの個体数は、2014年度には246万頭になった。2019年度末現在は約189万頭いるとされている。増えすぎた鹿は、農作物や林業に大きな被害を出す。植生を食べ荒らすことによる、生態系への悪影響や土砂の流出などの災害も懸念されている。農作物の被害総額は年間50億円以上である”

小諸市の鹿の状況でいうと、浅間山は国立自然公園に認定されているので、野生動物保護地域になっていて、鹿が自然と増えていき、その鹿が山を下りて人里にくるので、減ることは今のところない、とのこと。ただ、捕獲してくれる猟師さんというのは、兼業の方が多いので、猟師を生業としている方はほとんどいらっしゃらないのだとか。捕獲処理した鹿を良質なジビエとして加工、ペットフードを商品化というのを自治体でやられたところは珍しいという話にも納得で、ドライフードは石川県で加工、ウェットフードは群馬県で加工して納品して小諸市のシルバー人材など地域の方の雇用によりパッケージ化して、小売り店に卸したり、通販事業も担っているそう。

農林課の方が、マーケティングのお話もしてくださり、ちょうどいま、マーケティングの部分で新たにこれから考える段階に来ている、そういう意味でも、SDGsの観点で商品を作ったり、進めていくことが、企業や自治体でもとても重要だ、パッケージのエコ化ということも視野に入れてみたい、とお話してくださいまして、わたしはSDGsを現実的に身近に形にしていこうという想いを共有できたこの瞬間をとても嬉しく感じました。

[№5915-0267]KOMORO PREMIUM小諸産シカ肉ドライフード( 犬・猫用) – 長野県小諸市 | ふるさと納税 [ふるさとチョイス] (furusato-tax.jp)

実際に、このように気になった商品について、お話をお伺いできたことにより、この商品が、愛犬・愛猫にとっての良質なペットフードという商品価値だけでなく、いろんな人たちが関わって、課題解決につなげるために開発された社会的価値を備えたダブルの価値のあるものである、という背景に深く感銘を受けました。

そして、初めて降り立った小諸市。軽井沢から、しなの鉄道に乗り換え、車窓から見える美しい田畑の風景、小諸市のレトロな街並み、美味しい信州そば、そして何より空気が澄んでいて美味しい!すっかり長野県に魅了されてしまった一日でした。